論文要旨

フィールドワークにおけるコミュニケーションについて
モンゴルでの事例

青井 美穂子

 私は卒業論文のテーマ探しも含めて、約一ヶ月間モンゴル国にいた。言葉の壁に阻まれて、私は相手と一見無駄に見えるコミュニケーションをとることよりも、モンゴルの文化や人について知ることに重きをおいた。そしてもっぱら彼らのやり方をまねることで彼らとコミュニケーションを図ろうとした。
 一方私が出会ったモンゴル人達は、私には無駄に思えるコミュニケーションを行っていた。私は彼らのこのやり方では、知りたい情報を得ることができないと判断し、彼らのコミュニケーションのやり方を軽視していた。
 こうしたやり方をとった私と彼らとの間にはコミュニケーションの齟齬が様々様々なところで起こった。同時に互いが相手とわかりあえていると「共感した雰囲気」があることもあった。
 本稿では、そのコミュニケーションの齟齬について事例を検証していくとともに、同じ空間を人と共有する時、必要なものはなんであるかについて考えたい。
 事例を通してみると、良好な関係が築かれているのはまさに情報を得るという観点からすれば、無駄なコミュニケーションの中にある。そしてこのコミュニケーションが良好な雰囲気をつくりだすことができたのは、「共有」するものが何かそこにあったからである。
 こうしたコミュニケーションにおける一見無駄に思えるものの有用性、そして「共有」する何かを見つけ出すことの重要性を次にフィールドに向かう者が認識し、「共感した雰囲気」の次の段階である「理解しあうこと」について検討されることが課題であろう。

 

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