論文要旨

彼らがそこで歌う理由・ポピュラー志向とオリジナル志向
ストリートミュージシャンの2つの戦略
深川泰斗

 近年、都市部の路上にあふれるストリートミュージシャンについて、彼らがそれぞれ何を求めストリートに現れるのか。また、多くのミュージシャンの中で、どのように他のミュージシャンとの差異を演出しているのかに焦点を当て、研究をおこなった。
 調査は2000年4月から10月にかけて、観客として彼らの演奏の場に立ち会うという形で進め、その際、客の数、質、曲のレパートリー、服装、年齢、プロ志向であるかどうか、客への応対の仕方、演奏の場所、他のミュージシャンへの意識などに注目し、彼らの演奏を観察した。こうして、およそ70組ほどのミュージシャンのデータを集めた。
 調査結果から、彼らを「芸術家型」「スター型」「こだわり型」「流行型」「内輪受け型」の5つに分類し、それぞれの特徴から、その分布、ミュージシャン同士の関係について考察した。
 本論文で描かれているのは、同じように路上で音楽活動をおこなう彼らの、意外なほどの多様性である。そして、上記の考察を通してその多様性から大きな流れを導き出していく。
 これらを総じて、結論では、彼らにとっての歌うことの意味、聴かれることの意味を明らかにした。

 

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