論文要旨

こだわらない強み
ミクロネシア連邦モエン島の現状に対する島民の意識

原田 悠貴

 筆者はミクロネシア連邦チューク州のモエン島、デュブロン島において1999年と2000年の延べ2ヶ月に渡るフィールドワークを行った。ここで得たデータをもとにミクロネシアチューク諸島の現状について考察していく。
 ミクロネシアは19世紀後半からスペイン、ドイツ、日本、アメリカの4カ国の国による植民地時代を経て独立したという歴史を持っている。これらの国の統治方法は様々であり、島民のおかれた状況も生活もその都度複雑な影響を受けた。
 このような歴史を背景に、伝統社会も様々な形に変容しながら現在に至る。大きな変化としては貨幣経済の浸透、大家族制の崩壊、伝統的生活様式の変容が挙げられる。このことはチューク州モエン島、デュブロン島の食生活、ゴミ事情、酒事情、自殺率の急増などの現状を導いた大きな一因である。
 これらの現状を先進諸国は「問題」と考えているが、モエン島民は「問題」と捉えてはいない。彼らは現状をあるがままに受け止めている。先進諸国や、近代化された社会で生きている人が憂うべき問題として考えていることはこの島の人達にとっては杞憂にすぎない。ここに島民の強みがあると筆者は考える。

 

HOME MAIL TOP