論文要旨

何を求めて離島へ嫁ぐのか
都市に住む若い女性の離島に対する意識と大島村に嫁いだ女性たちの意識に関する比較研究

稲富 智子

 本論文では、離島における嫁不足の問題と都市部女性の意識の変容との関連性について、及び離島に関する都市部女性の意識と実際に離島に居住している女性や本土から嫁いできた女性の実状との比較・分析をおこなった。
 その結果、従来から離島における嫁不足が問題とされてきたが、現在では女性の結婚に対する意識が「外的条件」から「質的条件」へと変わり、嫁のきての地域格差がなくなりつつあるということがわかった。
 これまでの離島振興は、既に離島に居住している人々を対象とした公共事業、設備投資などの「ハード面の充実」に力を注ぐことで島の活性化を図ろうとするものが主立っていた。しかし今後の離島振興策としては、ハード面ばかりに目を向けるのではなく、これから島に移住しようとする人々や嫁いでくる女性の不安を解消し、かつ支援できるような人間関係のネットワークづくり・地域社会づくりなどといった「ソフト面」を重視したものでなくてはならない。このようなソフト面に重きを置く離島振興策が、これまであまりにも重要視されていなかったと思われる。
 女性の意識や価値観が変化し、離島自体の変化も必要とされる現在、離島における地域社会の新たな在り方の模索などの質的条件の向上が離島に嫁いでくる女性ならびに幅広い年齢層の増加へ実を結ぶといえる。
 事実、事例としてあげた大島では、本土から嫁いでくる女性の占める割合が年々増加傾向にあり、これによって大島の社会の在り方も変わりつつある。このような島の変化と女性の意識変化においてうまく接点を見出すことができれば、離島の嫁不足を解消するさらなる相乗効果が期待できるのである。

 

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