論文要旨

アイルランド伝統音楽における共在性
‐会うことと得ること‐

町田 佳菜子

筆者が2009年にアイルランドに1年間留学した際、アイルランド伝統音楽と出合い、自らも演奏するようになった。それから日本とアイルランドを行き来するようになり、その2国間には音楽を取り巻く環境に違いがあることに気づいた。アイルランドではなぜ日常的に町のパブや路上で音楽がおこなわれているのか、それがどのように維持されているのかということに興味を持った。
筆者は、2009年4月から2012年1月現在までに4回アイルランドに渡っており、日本でもアイルランド伝統音楽奏者として演奏活動をおこなってきた。アイルランドではライブ、セッション、バスキングの3種類の演奏形式がある。セッションはパブでおこなわれる演奏であり、バスキングは路上でおこなわれる演奏である。筆者はこの両方をしながらアイルランドを旅した。本論文では、筆者のアイルランド伝統音楽を通した生活を事例として記している。
例えば、パブでは客は演奏中におしゃべりをしているが演奏を聴いていないわけではないということや、楽譜とCDやパブで聴く演奏は、同じ曲でも少しずつ異なっていること、有名な演奏家も楽器をはじめたばかりの初心者も同じセッションでともに演奏すること、田舎でのバスキングでは多くの通行人がお金を入れてくれることなどである。
そしてそうした事例から、アイルランドではいかに音楽が日常生活に沁みついているのかということや、耳で聴き目で見て習得するというアイルランド伝統音楽の伝承方法がそれを支える大きな要因であるということを検証し、アイルランド伝統音楽奏者として今後筆者がどのような活動をおこなっていきたいかを最後に述べた。

 

HOME MAIL TOP