論文要旨

「動かす」ことによって子どもの主体性を導き出す教育
幼保一元化施設「きっずこくらみなみ」の現場より

宮野 真実

本論文の調査は、福岡県北九州市小倉南区にある幼保一元化施設「きっずこくらみなみ」でおこなわれた。「きっず」は北九州市ではじめて幼保一元化制度を取り入れた施設として2004年4月に開設され、現在も保育や教育が続けられている。筆者もその中に参加し保育士の補助として関わりながら、子どもたちの様子を観察した。子どもたちを見ていると、明確な目的を持たないまま、単に走り回ったり、飛び跳ねたり、大きな声を出すなど、エネルギーを無駄に消費しているような、無目的な動きも多いように感じた。しかし、子どもたちにとって、動くことは欲求であり、動くことが彼らの成長にとってとても重要なのである。その動きから導き出される遊びによって、人間関係のルール、社会性を学ぶ。そのことで、嬉しさ、楽しさ、悲しさなど、さまざまな感情を体験する。そうして、子どもたちは成長していくのである。しかし、子どもたちに、遊具やおもちゃなどの環境を与えるだけで子どもたちを遊ばせておくのでは本当の子どもたちの成長にはつながらない。子どもの成長には、大人の介入が必要なのである。教師が間接的や直接的に関わることによって、自分たちだけでは経験できないような環境、遊びを体験することができる。遊びの幅も広がり、新たな楽しみを見つけることもできる。そして、教師と遊びの世界を共有することで、自己の世界を広げることができるのだ。そのような、大人の介入により、子どもたちの自発的な動きや、遊びを引き出すことを本論文では「動かす」という言葉を用いている。
きっずこくらみなみには、子どもたちを動かすしかけがたくさんあり、その「動かす」ということを実践している。「動かす」ことによって、子どもたちは身体的に動き、そのことによって精神的にも成長し、子どもたちの遊びはより主体的な充実するものになっていくのである。

 

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