論文要旨

ジェラシー・ドライビング
嫉妬する私

佐藤 奈緒子

いままでの先行研究では、嫉妬の定義が十分に議論されてこなかった。そこで本論文ではまず、事例から嫉妬の定義を導き出すことを試み、嫉妬を「主体が価値を置くものを他者が所有したときに主体が他者に対して抱く感情」と定義することができた。
また、価値を置くものを所有した他者が誰であっても嫉妬が生じるわけではない。我々はあまりにかけ離れている他者には嫉妬しにくい。嫉妬の対象となるのは、自己と比較対象としている他者であり、それを本論文では「準拠他者」とよんで考察を進めた。我々は自分と同等だと思っている人を準拠他者としている。また、同族意識を持つ非常に親しい人は準拠他者となりにくく、子どもは社会関係の把握が十分に出来ないため、準拠他者とする人の範囲が広いという特徴がある。
嫉妬は、別の感情へと変化する「プレ感情」である。嫉妬は怒りや憎しみ、悲しみなどの感情を引き起こす。嫉妬によって引き起こされた別の感情は、主体の意識や行動に働きかけ、内的や外的な嫉妬構造の変化を起こす。このように、嫉妬には三段階の動態があるのである。
嫉妬の構造を整理していくと、嫉妬の発生条件やその動態は、実は単純であることがわかった。この単純な構造である嫉妬は、通文化的に経験されていると考えられる。

 

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