論文要旨

越軌する身体
姫島盆踊りにおける「伝統」と創造の葛藤

内山 雅世

本論文では姫島盆踊りの「伝統」について考察をおこなう。
姫島の盆踊りは毎年新しいものが作られては人気があって続けて踊られるもの以外の踊りはほとんどその年限りで消えていくという特長をもっていた。しかし現在、盆踊りの保存会の結成や無形文化財への指定により、同じ踊りを続けていくことを前提とする決まりができ、一部の踊りが「伝統踊り」と呼ばれ固定化されている。私は、それまで常に変化しつづけてきた盆踊りが、変化することを制限された時に何が起こるのかに興味を抱いた。 従来、踊りに関する研究では、調査者が踊り手を外側から観察し、そこから読み取れるものを解釈していくという方法が広く用いられている。しかし、私はそうした研究報告の多くは、踊る人自身が踊りに何を求めているかについてや、踊っている人自身だけが感じることができる身体感覚についての内的視点が欠けていると考える。そのため、実際に姫島の盆踊りに姫島の人々と同じ条件で参加することで、盆踊りを内側から見ようとする試みをおこなった。
私は2001年5月26〜29日、7月20〜23日、8月3日〜27日の合計約1ヶ月間姫島へ滞在した。8月には、予備調査の時にお世話になったAさんの紹介で大海集落の空家を借りることができ、大海集落の人々と一緒に、盆踊りの練習・準備・本番・後片付けなどに参加した。

 

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