論文要旨

公園居住という自立
−ホームレス自立支援を通して

渡辺 拓也

私は2001年5月12日〜5月16日、5月23日から24日、6月9日〜7月1日、7月18日〜8月5日、8月16日〜9月1日ののべ2ヶ月弱を西成公園での調査にあてた。その間、西成公園のY夫婦のお宅に居候させていただき、その仕事を手伝いながら共に生活した。 西成公園に居住する人たちは一般的には「ホームレス」と呼ばれている。「ホームレス」とは直訳すれば「家がない」という意味になる。しかし、公園居住者たちは厳密に言えばテント小屋であれ「家」を持っており、「ホームレス」ではない。おおもとに返れば現在「ホームレス」と呼ばれている人たちははじめから「ホームレス」と呼ばれていたわけではない。「ホームレス」という言葉は90年代になってから頻繁に使用されるようになった言葉で、それ以前には「野宿者」「浮浪者」あるいは「ルンペン」「乞食」と呼ばれてきた。しかし、彼らに対する適切な呼称などは存在しない。場合によっては彼らは「失業者」とも呼ばれる。
最近ではホームレスの自立支援が言われる。この言葉は私たちの社会が「ホームレスは自立していない」あるいは「できていない」ものだと考えていることの象徴だと考えられる。その自立支援は「ホームレス」の就労援助と居宅援助を主としている。自立とは家を持ち、仕事を持つことなのだろうか。しかし、実際には公園ホームレスは家を持ち、自活し自立している。そればかりか公園には私たちの社会にはない自由があった。
この論文では西成公園の公園居住者の生活についてのデータを通して私たちが考える「自立」についての考察をおこない、自由とは何かという問いに取り組む。

 

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