論文要旨

現金贈与の社会装置
キリバス共和国におけるビンゴゲームの役割

今田 文

キリバス共和国では、さかんにビンゴゲームが行なわれている。ビンゴゲームはマネアバと呼ばれるキリバスの集会所でひらかれ、多くの女性たちが参加している。ビンゴゲームでは、参加者はお金を賭け、ゲームに勝てば配当金を得られる。女性たちは、毎日のようにビンゴに通い、お金を賭けていた。本論文では、なぜキリバスの女性たちが熱心にビンゴゲームに参加しているのか、距離的要因、金銭的要因、規模的要因、社会的要因をもとに検証している。そして、ビンゴゲームはギャンブルでありながら、人々は金銭的要因ではなく、社会的な要因からビンゴゲームに参加していることが明らかになる。
キリバス社会のなかでビンゴゲームは、様々な社会組織において恒常的なあるいは一時的な集金システムとなっている。しかしながら、集金システムによって、参加者は社会組織から一方的に搾取されるわけではない。人々は自らが所属する社会組織への金銭的貢献を目的としてビンゴゲームに通っており、主体的にお金を贈与しているのだ。
どの文化においても、理由なく直接お金を渡すという行為には社会的に少なからず問題があり、それを巧妙に忌避する手段が用意されている。キリバスにおいても同様に、現金贈与に関していくつかの手段がもちいられている。そのなかでビンゴゲームは、ゲームを介在させることにより現金のもつ象徴性を薄め、活発な現金のやりとりを可能にしているのである。

 

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