論文要旨

志賀海神社の八乙女について

石橋 利恵

 福岡市の一角に志賀島はある。この志賀島の志賀海神社に仕える巫女は「八乙女」と呼ばれ、昔から8人の老女たちがその任を果たしてきた。八乙女は八軒の家から代々世襲制で受け継がれてきたが、近年では現在のなり手にさえ不足している状態である。なぜ、戦後から変わることなく、伝統を守り受け継いできたはずの志賀島で、このような現象が起きているのだろうか。
 本稿では、その「八乙女不足」に関するさまざまな要因について調べ、さらに氏子たちから取ったアンケートから、神社と氏子の関係を中心に検証していきたい。
 志賀海神社では、古くからの祭りが今でもほぼ毎月行われている。しかも観光客集めのためではなく、あくまでも氏子主体である。志賀海神社の行事はいろいろな場面で氏子の奉仕活動に支えられており神社と氏子のつながりは深い。
 「八乙女不足」の問題について、神社関係者は「時代の流れ」「氏子の信仰心の薄れ」を原因に挙げる。しかし、氏子から取ったアンケートを見てみると、それだけではないようだ。たとえば、神社そのものや祭りの意味について知らない人が増え、意味が分からないから興味を持てない人が多かった。また、神社の内部のことが、関係者のなかだけで話がすすみ、他の氏子には全く情報が入ってこない、という話も聞いた。神社側は、今のところ具体的な方策は行っていない。しかし、氏子と同じくこのような啓蒙活動の必要を感じてはいる。
 八乙女や祭り、古くからのしきたりなど、志賀島にはまだたくさんの伝統が残されている。それら志賀島の貴重な文化を残していくために、神社と氏子の一層の情報交換が課題となるだろう。

 

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