論文要旨

葛藤する善意
タイ山岳少数民族支援施設の現場から

松永 夕紀

筆者は、タイで2002年3月と2002年7月にあわせて一ヶ月にわたりフィールド調査を行なった。調査地としてパヤオ県の21世紀農場、チェンライ県の若竹寮に滞在し、参与観察とインタビューを行なった。これらの二つの施設は、日本人支援者からの支援金によって運営されているが、運営者の立場が両者で異なっている。21世紀農場は日本人NGO活動者である谷口巳三郎氏、若竹寮は山岳少数民族出身のヨハン・チェルマー氏が運営を行なっている。前者は支援する側が直接運営を行なっている支援施設として、後者は支援される側が直接運営を行なっている支援施設として紹介している。本論文では、山岳少数民族が現在のタイ社会においてどのように問題視されているのか、これら二つの支援施設の現状と、支援する側される側のおのおのが抱える問題点を書き出していく。タイは数多くの日本人NGO団体が活動を行なっているが、本論文で紹介する二つの支援施設は継続性、功績からも支援形態としては成功例として考えられる。しかし、現場での調査では施設運営者や支援する側の葛藤がみられた。筆者は、これらの葛藤が現代の国際支援のあり方を問ううえで、重要な要素であると考えた。支援施設に対して日本側の思い込みとタイ側の現状を把握し、国際支援を行なう上での課題を提示していきたいと思う。。

 

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