論文要旨

山に集まる人々
矢筈山早朝登山

三宅 加奈子

福岡県北九州市門司区には矢筈山という低山がある。そこには1日150人近くもの人が登ってくる。そして、そのほとんどが「早朝登山者」と呼ばれる人々である。「早朝登山者」とは、矢筈山に日常的に登ってきている人々を指す。彼らは矢筈山に登ることを日課としており、その3割ほどの人は雨が降っても風が吹いても休むことがないという。25年間毎日登りつづけている人までいる。本論では、なぜ彼らが山に登るのか、矢筈山がなぜ多くの人を集めるのかについて明らかにする。
まず、早朝登山者達が山頂に着いたときに印をつける登山者名簿から、登山者達は健康への安心感と達成感を矢筈山早朝登山に求めていることが分かった。そして、登山者には「気軽に接しあう関係」が見られる。考察においては、早朝登山を継続することから生まれてくる「山に登る理由」と「気軽に接しあう関係」から矢筈山の魅力について考える。そして、日常的に登ることができる矢筈山だが、日常の生活から切り離された山という非日常的な空間だからこそ成り立つ人間関係があることが明らかとなる。矢筈山早朝登山では日常的に非日常を体験することができるのだ。

 

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