論文要旨

佐賀県白石町における「豆祇園」の変遷
豆祇園に見る親子関係

白武佳子

 佐賀県白石町には「豆祇園」と呼ばれる子供だけで行う祭りがある。この祭りは昔から行われていたにもかかわらず、近年その形がとみに変わってきた。
 その原因として「少子化の結果」また「伝統の消失」がまず考えられるのだが、本稿では、大人や共同体の子供との接し方の変化が原因と考え、祭りを行う子供たちとその保護者との関係の変化から豆祇園を見ることにした。
 調査方法は、すべてインタビューの形式をとり、ある部落の豆祇園における時間的流れと、1998年度の豆祇園に筆者が参加し、同年の他部落の豆祇園も調査することで、時間変化における比較の縦軸と、同年の複数部落の比較における横軸を明らかにした。
 本調査の結果「豆祇園」の変化には子供と親、そしてそれを取り巻く地域の共同体の関わり方の変化が関わっていることが見えてきた。
 そして、「豆祇園」はその時代の流れの中で、信仰の対象、子供の成長のシンボル、農民の数少ない娯楽の一つという存在から、地域と親子のふれあい、村おこしの為の方法の一つとして存在価値を変えてきた様子が見て取れる。
 それは、ただ消えゆくだけでしかなかった農村の小さな「祭り」という立場から、ある目的を持った、イベントとしての存在価値を見いだされた「豆祇園」の姿なのである。 

 

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