論文要旨

フィールドワークによる日系人の生活戦略分析
−人間関係と言語習得から見る支援の一つの可能性

黒田 陽子

筆者は、2003年から2年間、外国籍の児童に日本語習得の支援活動を公立学校内でおこなっていたが、教師たちから聞かれる言葉は、「親が将来どうするのかはっきりしないと、対応できない」というものだった。筆者は当初、外国籍の子どもの研究を視野に入れていたが、大人の「考え」を知る必要があると感じ、親である日系人だけでなく、幅広く教育に携わらない人の調査をおこなうことにした。そして、それがより良い支援の可能性を導き出せる作業だと考えていた。
調査の結果、日系人たちの生活や考えは多岐に渡っていることがわかり、一概には傾向を述べられなかった。そこで、日系人を居住スタイル別に分類した。居住スタイル別に分類することによって、今までよくわからないと感じていた日系人の人たちがわかるようになった。たしかに、彼らはフレキシブルな単純労働者として不利な立場で労働を強いられていたが、皆一様な労働者でもなければ、一様な地域住民でもなかった。日系人たちは日本人との関係だけでなく、同郷の人たちの間でも複雑な感情を抱きながら生活しており、筆者は戸惑いを感じた。結局、教育は本当に必要なのか、筆者と彼らの関係から日本社会で生きるということについて考えさせられる結果となった。このようにフィールドワークをしたことによって、さまざまな思いや迷いがよぎったが、調査結果から言語習得支援の在り方を提案した。

 

HOME MAIL TOP